あふれるポスドクと大学ベンチャーの人材不足
ポスドクという言葉をご存知だろうか。ポスドクとはドクター(博士号)取得後に任期付きで、助手、あるいは助手と大学院生との中間に相当する職で大学に残っている人たちのことを言う。1996年に科学技術基本計画が策定されそこで「ポスト・ドクター等1万人支援計画」が提唱された。実際に、2003年度の支援者数は1万人を超えて計画は達成された。
また一方で2001年には政府として2004年度末を目標として「大学発ベンチャー1000社計画」を提唱した。そしてこの目標もまた達成されている。
この二つの成果だけを見ると、ポスドクと言われる専門家たちが増え、そして、大学が持っているノウハウを社会に還元するといういいサイクルができているように見える。ところが実際はそうもうまくいっていないのである。文部科学省によると、2004年度の大学院博士課程修了者の約30%が進路未定。「他分野への適応能力が不足」などとして博士号取得者の採用に消極的な企業も多く、また、学生自身の多くが大企業への就職を希望しているという。
先日、近畿経済産業局産学官連携推進課が「ポスドクの現状と大学発ベンチャーの現状、そして研究者のキャリアアップ事例」をまとめた冊子を作った。そこからいくつか数字を抜粋したいと思う。
大学発ベンチャーの課題
1位 人材の確保・育成が難しい(38.0%)
2位 販路の開拓・顧客の確保が難しい(30.2%)
3位 資金調達が難しい(18.4%)
大学発ベンチャーが必要とする人材
1位 研究開発(66.8%)
2位 営業販売(47.4%)
3位 財務(45.6%)
大学発ベンチャーの研究者の業務全体に対して研究以外の業務が占める割合
1位 40%以上(63.3%)
大学の研究人材(学士〜ポスドク)の今後のキャリアプラン
1位 アカデミックキャリアとして推進(38.2%)
2位 企業等に所属して研究を続けたい(33.2%)
3位 自分の専門を活かした研究以外の仕事につきたい(22.6%)
研究人材の研究開発型ベンチャーへの転職可能性
十分考えられる(34.8%)
可能性がある(50.8%)
可能性は全く無い(13.9%)
大学発ベンチャーの雇用を希望する研究者の学位
学士号取得者(52.5%)
修士号取得者(78.8%)
博士課程修了者(64.6%)
ポスドク(52.5%)
完全なミスマッチである。大学発ベンチャーは研究者が足りない。ポスドクは増えた。研究者は自分の研究を続けたい。だから大学発ベンチャーには入りたくない。そもそもその求人情報は知らない。大学発ベンチャーはポスドクは扱いづらいからとりたくない。一部、他の数字から引っ張ってきている論拠もあるがだいたいこんなもんだろう。(詳しくはリンク先のPDFを見てください)
そして、近畿経済産業局では以下の3項目を今後の取り組みとしてあげています。
- 研究人材のキャリアパス多様化に資する意識啓発と支援システム等の周知
- 研究人材と大学発ベンチャーとのマッチングの場の提供
- 研究人材流動化のための支援システムの政策提言
ここで思うのは「理系.info : これからの理系人への提言」でも掲げているように理系自身も変わらなければいけないということです。そうすることで、理系自身が社会的にも認められるようになり、地位も向上していくのではないでしょうか。そして、そうなってこそ初めて上記のようなインフラが本当に活かせると思うのです。
僕自身も、質の高い研究者が育ち、その研究者がその研究成果を活かしながら産学両面で社会に貢献していくという大きな流れを作るために頑張っていきたいと思います。
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